看板に偽りなし
最初に:
筆者の手の大きさは「手首中央から中指の付け根まで11cm、中指の付け根から中指の先端まで8.5cm、掌の最長の幅8cm」。1ヶ月程度使用してレビューしている。
本体形状:
掌を開きすぎず丸めすぎずに乗せることができる。机の上に肘を置いてリストレスト無しで丁度良い高さになるように設計されており、デスク環境が整備されていない外出先でもこれ一つで対応できる。中指と人差し指をボールに置くと他の全ての指が自然と収まるべきところに収まるようになっており、「絶妙に馴染む」というキャッチコピーそのままである。ただしいくら手に馴染むといっても毎日長時間(8時間程度)使い続ければ手は疲れて痛みを伴ってくるので、四六時中机の前にいる生活を送る場合は左手で使用できるポインティングデバイスと併用して右手を休ませる時間を作るべきだろう。光沢の少ない黒一色というデザインも悪くない。
ボールとその周辺:
44mmという直径は二本指でも三本指(薬指を用いる)でも操作しやすいギリギリの大きさである。球も軽く、操作感に不満はない。支持機構にゴミが溜まってもボールの滑りへの影響が(人工ルビーと比較して)少なく、掃除の頻度も少なくて済む。ただしボールの位置がやや高く、長時間指を乗せ続けると人差し指と中指の手の甲が突っ張ってくる感覚がある。ボールの色は赤色のみだが、個人的にはNulea M505などの同型他社製品のように黒、青、緑、紫などのラインナップもあると嬉しい。
ボタン:
比較的静音だが無音というわけではない。個人的にはこの音が好きでよく電源を切ってクリックして楽しんでいる(ボタンの寿命を縮める可能性があるのでやらない方が良い)。ボタンの数も機能も必要十分で特にホイールにチルト機能が搭載されていないおかげでドライバーソフトを用いずとも確実にホイールクリックが機能するのが良い。
ホイール:
一般的なホイールであり、付属のドライバーソフトでホイール感度の調整をすることもできずトラックスクロールもできないため、長距離スクロールを頻繁に行う作業に使用すると親指の付け根を痛める可能性がある。
ドライバーソフト:
見やすいとは言えないUI、ソフト開始時と終了時に出現する邪魔なポップアップ、左ボタンを左クリックから変更できない仕様、ホイールクリックを他のボタンに移しても機能しない不具合、前述のスクロール関連の設定ができないという代物だが、そもそもソフトを入れなくても全てのボタンが機能するためそこまで使い心地に支障はない。
接続:
問題なし。Bluetoothと無線ドングルが両方あることで汎用性が高く保たれている。技適をクリアしているので余計な心配をせずに済む。
価格:
この完成度でありながら親指トラックボールの入門機として名高いLogicool M575以下の価格で購入できるためコスパの良さは他の低価格(2024/7/28現在6000-7000円付近)のトラックボールと比較しても群を抜いているだろう。人差し指/中指トラックボールの入門機としてうってつけであると思う。
総評:
右手人差し指/中指用トラックボールとしては非常に使いやすい。他のトラックボールを無理やり使い続けた結果として発症した指の腱鞘炎はこの機種を導入することで少しだけ回復した。筆者は現在Kensington SlimBlade Proを普段使いしているが、サブ機として使用できるよういつでもGraviを机の上に置いている。筆者のようにトラックボールを四六時中触っていないと気が済まない人でもなければ、この一台でほぼ全てを賄うことができるだろう。上述の通りボールの位置、ホイール、ドライバーソフトに改善の余地はあるものの、この低価格が売りの製品でもあるので、価格と機能と需要のバランスを考えるとここが安定点という気もする。