雷雲は低気圧発生により起こる上昇気流によって発生します。上昇気流の中では電荷の分離・集積が起き、高い電荷を持つ雲が発生します。これが雷曇です。
雷曇の底部には負の電荷が集中しており、雷曇が発達すると正に帯電した大地や電線に対し放電する。これが雷です。
雷サージとはこの雷雲や雷により発生する直接・間接的に発生する異常電圧を示します。
- その名の通り、直接雷が落ち発生するものです。雷雲と大地の高い絶縁を破り発生する為、自ずと高い電圧、電流が発生する。この直撃雷から機器を保護することは非常に難しく、雷ガードを設置していても保護できない場合があります。
- 線路に高い電圧が誘起される誘導雷としては、静電誘導によるものが考えられます。
- 発生のプロセス
- (1)雷雲が近づくと、雷雲の負の電荷が大地や電線等にある正の電荷を誘起する(引き付ける)。
- (2)落雷等により、雷雲の負の電荷が消失し、正の電荷が両方に流れていく。この、両端に流れていった電荷が雷サージとなる。
雷サージは直撃雷と誘導雷の2種類に分けられます。
直撃雷で発生する電流、電圧は雷サージ保護素子で保護するには桁違いに大きい為、事実上不可能といってもよいでしょう。直撃雷による被害は雷が落ちない限りは発生しませんが、誘導雷は雷雲があるかぎり、雷サージが発生する可能性があります。その為、被害の発生する頻度は誘導雷によるもののほうが遥かに多く直撃雷による被害は少ないと言われています。実際の雷サージ保護は誘導雷による雷サージから保護するものとなります。
雷サージにより壊れる機器は、半導体集積回路を用いている様な複雑な機器に集中しています。電気ストーブやドライヤー等、電気→熱、電気→動力等、単純に変換をかけている機器では殆ど起こりません。これは半導体集積回路が過電圧、過電流に大変弱い事に端を発しています。実際に人が触れただけで壊れてしまう集積回路もあるくらいです。
また、雷サージのために機器破壊が起こる事例の殆どは通信系(電話線)に集中しているといえます。
- (1) バリスタ
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電源系のサージ保護によく使用される素子。電気抵抗体の一種であり、両端に加える電圧が高くなると抵抗値が急激に小さくなる特性をもっています。
その動作原理は、半導体のトンネル効果を利用し、ある一定の電圧になると端子間の抵抗値が小さくなります。この電圧をバリスタ電圧と呼び、この時の電流値は 1mA で試験を行っています。
構造的にコンデンサの成分を持っているため、微妙なアナログ波である電話などの信号系のサージ保護には、信号自体の減衰の原因となるため使用されず、電源形に主に使用されます。
但し、破損するとショートモードになり、発火する可能性がある為、ヒューズをつけ、ヒューズが切れた場合はLEDランプが消える仕組みになっています。
- (2) ガスアレスタ
- 通信系のサージ保護によく使用される素子。アーク放電(大気中の放電現象)を利用しており、その放電開始電圧は中に封入しているガスによって決定されます。バリスタと比較すると、耐久性に優れ、破損して事故につながることは殆どありません。
また、一定電圧に対して有効であるため、微妙なアナログ波である電話等の信号系のサージ保護によく使用されています。